大判例

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大阪高等裁判所 昭和27年(う)671号・昭27年(う)672号 判決

所論は要するに経済関係罰則の整備に関する法律第二条の賄賂罪の対象となる職務は当該団体の悉くの事務でなく、あくまで経済統制に関する事務だけであると解すべきであるが、同法第二条の経済団体となつた被告人等の属する普通銀行の貸付それ自体は今日経済統制に服する業務でない。ただ金融機関資金融通準則があるが、その第一総則第一号により金融機関は「資金の融通をなすに当つてはこの準則の定めるところにより自主的にこれが規制を行」つているのであるから経済の統制を目的とする法令である金融緊急措置令第六条及びその施行規則第十三条に基く統制的権力関係に服するものではない。従つて普通銀行の資金運用についてこの事務はその役職員にとつて右法律第二条に謂う職務に該当しないにも拘わらず金融機関の行う事務は一切賄賂罪の対象である職務であると速断した原判決は法律の解釈を誤り罪とならない事実に刑罰法規を適用した違法があると言うのである。しかし経済関係罰則の整備に関する法律第二条は「…………其ノ他経済ノ統制ヲ目的トスル法令ニ依リ統制ニ関スル業務ヲ為ス会社…………ニシテ別表乙号に掲グルモノノ役員其ノ他ノ職員其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ收受シ…………」と規定し、本条賄賂罪に触れる役職員の身分を定める上において、経済統制を目的とする法令により統制に関する業務を為す会社等で別表乙号に掲げるものの役職員と限定しておるに過ぎずその役職員の職務に関して何等の制約を設けていないことが法文自体に照し、明瞭である。さすれば右職務に関しという字句の解釈については一般刑法犯における公務員の收賄罪の場合と同一に理解すべきであつて、その者が前示の如き会社の役職員である以上は会社のなす統制に関する業務そのものに対する場合は勿論直接かかる性質のものでなくても、その会社の役職員の職務に属する事務であれば足り、更に進んで職務自体にあらずとも職務に密接な関係ある事務に対する賄賂である限りは、すべて右法条に所謂職務に関し賄賂を收受したものと言い得るのである。

しかして原判示によれば被告人田中孝一は判示滋賀銀行京都支店長として同支店の銀行業務の一切を総括する職務に被告人田附良太郞は同支店の支店次長としてその銀行業務執行に関し支店長を補佐し支店長差支の際には同支店の銀行業務一切を総括する職務に各従事中同支店の顧客である取引先関係者から平素従事する銀行業務の執行殊に融資又は手形割引をしてやつたことに対する謝礼の趣旨で金品を收受したと言うのであつて、被告人等が前示法律第二条に謂うところの会社の役職員に該当する点については論なくその融資又は手形割引の事務が被告人等の職務自体に属し或はこれと密接な関係ある事務であることも亦明かであるから所論のようにこれ等の事務自体が今日経済統制に関する事務にあたらないかどうかに拘わらず前示法条の收賄罪が成立するものと言わなければならない。のみならず現在普通銀行等の金融機関のなす資金の融通については金融緊急措置令施行規則(昭和二一年大蔵省令第一二号)第十三条第二項の規定によつて制定せられた昭和二二年三月一日大蔵省告示第三七号金融機関資金融通準則が存しこれが右施行規則と相俟つて金融緊急措置令の内容を補充しておるものであるから右準則に従うことは即ち金融緊急措置令に従う所以であり、換言すれば前示資金の融通に関し金融緊急措置令に基く統制が現存しておるのであり法規の制約に服するものと言わなければならない。同準則第一総則第一項においては普通銀行等の金融機関は資金の融通をなすに当り自主的にこれが規制を行わなければならない旨を定めておるがその趣旨は銀行等の金融機関においては他に俟つところなく自己の良識を以て自ら進んで準則の定めるところに従い融資の規制を行ふべき旨を示したのであり、ほしいままなる融資や、その規制を許したものでないことは説の要を見ないのである。然らば右準則規定の文言を援用し前示資金の融通が法規の統制に服するものでないと解することは到底できない。従つて被告人等の従事した資金運用の銀行業務には今なお法規の統制が存するのであるから所論のように経済関係罰則の整備に関する法律第二条所定の職務が統制に関するものだけを指称するものとの見地に立つて考察しても被告人等の銀行事務執行は正しく同条の謂う職務に該当しその收賄罪の対象たるべき職務であること勿論である。畢竟原判決には少しも所論のような違法なく論旨は理由がない。

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